厚生労働省も指針で、短期間の雇用契約を反復更新するのは派遣社員の不安をあおり、望ましくないとしているが、実際には逆行する事態が生じている。
賃下げと、契約期間の細切れ化で先行きの見通しがきかない不安から、今後の働き方は「できれば正社員で」という人が六割強を占めた。
ベテランの派遣社員が振り返る。
二九九○年代の半ばごろ、まだ私たちは専門職集団だという自負があった。
年収が平均でも二六○万円くらいあり、今よりはずっとよかったが、それでもその金額が専門家としてのプライドが持てる金額かどうかとか、どのように専門性を確立して仕事をするかといった、前向きな議論をしたものです。
今は安く買いたたかれ、そんな議論をする気さえ起きない」ほとんどの業種で派遣社員の受け入れがOKとなった、派遣大衆化時代のいま、かつて多くの派遣社員が発散していたプライドが消えかかっている。
正社員との比較をしながら、若年フリーター、中高年男性フリーター、女性非正社員と、大きく三つの視点から非正社員の実態を分析してきた。
この三者に共通するものは何か。
大まかに表現すれば、こうだ。
「処遇が低すぎる」では、正社員はどうか。
「忙しすぎる」「正社員は多忙すぎ、非正社員は安すぎ」という、対極の″すぎ″の木が二本立っているのが、今の日本の労働実態である。
だからどちらの道を選択しようと、夢や意欲がわいてこない。
働くことに関して、前向きな気分になれない。
ことに非正社員の場合は、正社員の代替要員としての役目が強まっているため、「安すぎる」だけではなく、「忙しい」という要素も加わって、魅力喪失に拍車がかかっている。
両者の働き方が、それぞれ極端すぎるのである。
もう少し調和が取れればいいのだが、それは無理な相談なのだろうか。
九○年代から現在にかけて、人件費などのコスト圧力を回避するために、雇用の流動化が進展した。
非正社員の増加が企業に何をもたらしたかと言えば、給与、賞与などの重い人件費負担に歯止めをかけたことである。
本来、企業経営は不況になると在庫調整などを通じて利益を生む体質に転換を図るが、九○年代半ば以降は人的資源の「在庫調整」をも同時におこなったことに特徴がある。
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